心の哲学は何を明らかにするのか「中国語の部屋」
心の哲学は何を明らかにするのか
先端的なAI研究や脳科学にもつながる
脳科学や人工知能の研究が進み、新しい知見が得られていく中で、心について根本的に考察する心の哲学は注目を浴び、現在、最も活気ある哲学分野のひとつとなっている。
中国語の部屋
英語はわかるが中国語はわからない人が、部屋の中にいる。
部屋にはマニュアルが置いてあり、中国語のある文字列(質問)を、中国語の別の文字列(答え)に変換する指示が、英語で書かれている。
部屋には二つの隙間があり、一方の隙間から、何かの質問が中国語で書かれた紙が差し込まれる。
中の人はその文を理解できないが、字の形だけを頼りにマニュアルを使い、別の文に変換して、紙に書く。そしてその答えを、もう一方の隙間から外に出す。
外にいる人は「中国語で質問したら、中国語の答えが返ってきた。部屋の中の人は、文の意味を理解しているはずだ」と思うだろう。しかし実際は、中の人は文を理解していないのだ。
この思考実験は、人工知能について考えるとき、深い意味を持つ。
「AIに心は宿るか」といった問いがよくあるが、AIに質問して的確な答えが返ってきたとしても、それがAIの「心」の証明になるわけではない。では、「心」とは何なのか。
その答えはまだ出ていない。